
2021年から始めた古民家「はりいしゃ」でのアートプロジェクトも、全十回を数えます。
2024年までは、県外からの招聘アーティストの企画を数多く立ててきましたが、2025年は福井にゆかりのあるアーティストを中心に企画を構成しました。
第一弾は、彫刻家/蟻塚知都による “LIMINAL DIVER” (境界の潜水士)と、アニメーション作家/おとしぶみによる「海辺のかれら」の作品展を同時開催しました。
今回の企画では、昨年に引き続き、地元の小学校・中学校と連携して、二名の作家にそれぞれ小学校・中学校で授業をしていただき、児童生徒の作品と共に、お二人がそれぞれ個展を開催する、という運びになりました。
僕達のアートプロジェクトが、地域という舞台で繰り広げていることについては、「はりいしゃ」のコンセプトとして切っても切り離せません。今回、地元の小・中学校と連携していくことは、とても有意義であったと思います。
教員という職業に従事していたご経験のある作家お二人(蟻塚さんは現役教員)をお招きした中、美術関係の方、美術に関心の深い方以外にも、様々な来場者にお越しいただきましたが、その中でも地元の小・中学校の教員の方、児童生徒の皆さん、その保護者の方の存在が大きかったように思います。
はりいしゃは、小さなギャラリーを併設しつつも、母屋の方は暮らしの名残が残る生活空間そのものであり、祖父母の家を訪れたときのような懐かしさ・居心地の良さに惹かれ、多くの方がゆっくりと作品を鑑賞しつつ、様々な話に花を咲かせていました。
それこそ、このギャラリーならではの特長なのですが、今回は特に、表現や教育、少子化や過疎問題といった、僕達の直面する課題に対して、真剣な意見交換が来場者達によって成されていたと思います。


元診療所であった小さなギャラリーは、アニメーション作家/おとしぶみさんのブースとして、中学校生徒達の作品と共に、おとしぶみさんが越前海岸をリサーチして、海岸の風景を生き物(海辺のかれら)に見立てたアニメーションがループ再生されていました。
おとしぶみさんが本企画のために制作してくださった新作アニメーションは、素朴なご本人の詩と歌を添えて、僕達の見慣れた風景に対し、改めて愛おしさを感じさせる素晴らしい作品でした。
生徒の作品群もまた、心から楽しんで、また少し苦労しながら制作したことが良く伝わる内容であり、生徒一人一人の個性が目立つ作品でした。
スクリーンの後方には、生徒の作品一点一点に対し、おとしぶみさんがコメントを書いて展示してくださり、ただ作って楽しんで終わりではなく、「表現を育む」という目標が一つ達成できたことと思います。


母屋の方は、彫刻家/蟻塚知都さんのブースとして、一本の丸太から彫り出した迫力満載の大きな人体の作品が2点、両手に抱える程の大きさの頭、足、トルソ(頭の無い人体)といった作品がそれぞれ1点ずつ、それ以外にも小作品が数点並びました。
蟻塚さんは、丸太が原木だったときの姿が分かるように、フレームを残して彫り上げるという作風であり、ただ写実的な人体像があるというよりも自然(樹木)としての存在感がそこはかとなく印象に残り、古民家の空間に良く馴染んでいるように感じられました。
そして奥の部屋には小学校児童達による流木を生き物に見立て、粘土を足して造形した作品群が並びました。
児童達の作品もまた、蟻塚さんの作品に負けんばかりのどれも勢いがあり、その展示場所・設置方法を蟻塚さんが手掛けることで、鏡台にカタツムリがくっついていたり、古代生物ラブカが天井から吊り下げられていたり、棚の上に鳥や海洋哺乳類が佇んでいたり、その演出もまた、鑑賞者を楽しませるのに一役を担っていました。


会期中の3日(月)と8日(土)は、急なお願いにも関わらずカフェ出展してくださった「日々折々」さんのランチメニューのカンパーニュサンドも好評で、多くの来場者の方にゆっくりと寛いでいただきました。
はりいしゃはアートと地域を繋ぐギャラリーですが、来場者の半数は美術の関係者であって、地域の皆さんにご参加いただくような形で、何か新しい文化的な価値を作り上げていくことは、まだ試行錯誤の途上であり、大きな目標を達成できているとは言い難いと思います。
それでも今回の試みは大きな一歩であり、小さな成功を一つ成し遂げた実感があります。
今回の企画は、作家であるお二人にとっては個展でありつつ、児童生徒達の作品も並べる、という実は難しい試みをお願いした側面もあります。
しかし結果としては、どの作品も活き活きと空間に馴染み、来場者にとって居心地の良い空間を演出することができたのではないでしょうか。

最後に、この企画に際して無償でご協力いただいた国見小・中学校の教員の皆様、搬入・搬出でお力添えいただいた西井さんと嶋田さん、お昼を提供してくださった美山亭の西さん、越前海岸盛り上げ隊の中で有志としてお手伝い下さった皆様、そして関係者の皆様、ご来場の皆様に重ねて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
この記事を書いた人

2019年末頃、東京都町田市からIターンで移住。
Qwel Design (クヴェルデザイン) として、web・システム制作、子どもプログラミング教室等事業を個人で運営。妻は版画ゆうびん舎を運営するおさのなおこ。
隊内ではシステム担当で当サイトのwebマスターを担い、熱く実直に組織改善、地域課題にも向き合う。