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アートと地域活動について、高校生からのお便り

2020年4月から改修工事を進め、2021年12月からアートプロジェクト(はりいしゃレジデンシー)を開始するようになった私達の古民家「はりいしゃ」。

地元福井県でもそれなりに活動が知れ渡るようになり、2025年7月、とある高校生から、「アートと地域活動」をテーマにご質問を綴ったお便りをいただきました。

おさの様

突然のご連絡、大変失礼いたします。福井県立鯖江高等学校3年のFと申します。
現在、学校の探究学習において「アートを兼ねた地域活性化活動はどんなことをしているのか?」について研究しており、地域に根ざした活動やその効果について学んでいます。

このたび、アーツ&コミュニティふくい様よりご紹介をいただき、はりいしゃのおさの様の取り組みを知ることができました。作品展示やイベントなどを通じて地域と関わりを持たれていると伺い、ぜひお話をお聞きしたいと思い、メールを差し上げました。

頂いたお便りはこのような序文から始まり、その後にご質問が綴られていましたので、以下、Q&A方式で回答を紹介します。

A. 様々な反応がありました。

子ども向けのワークショップでは、アーティストの方達が独自の内容で展開してくれるので、それらが他ではなかなかできない体験だったので、地元の子どもたちの感性に大いに刺激になっているように見えました。

地区の方々は、アートへの関心が少なかったり、敷居の高さを感じるところがあるのか、誰でもが見に来てくれる、という感じにはなりませんでした。ですが、ご来場くださった地区の方々の中からは、このような企画をぜひまたやってほしい、と応援してくださる声も多くいただきました。

海岸在住の方よりも、福井の中心部からわざわざお越しくださる、はりいしゃのファンの方も増えていきました。

A. 住んでみると自然と様々な問題点が見えてきます。

内側から地域のことを知るためには長期的に地道に関わらないと理解できないことが多いので、出来るだけたくさんの人が丁寧に地域と関わってゆくことが大切だと思います。

また、そこに住まなかったとしても、持続的に関わる人が増えることが重要です。

A. 実現にはいくつかのハードルがあると思います。

ですが時代の流れとしては、地方で仕事をすることの魅力を感じている人も多くなっていると思うので、地域に魅力が増えれば自然と人の流れが生まれるのではないでしょうか。

A. 過疎問題です。そして、教育的観点において、芸術に触れることの重要性が軽視されがちな部分で、その理解を高めにくいことが地域(ひいては社会全体)の問題だと思います。

土壌としては伝統工芸が盛んだったり、手仕事が当たり前にできる人が多い土地柄、決して芸術的感性が低いわけではなく、むしろ地元の祭りなどをとってみても、芸術性の高い要素がたくさんあります。

それでも、これから、というアーティストがこの土地で何かを感じ取って作品に変えてゆくことの価値などについては多くの理解は得られていません。

それだけを地域問題と捉えているわけではありませんが、アート企画を地道に続けていくことで、若いアーティストが地域と関わって生まれるものの素晴らしさなど少しづつ浸透し、どこかで突破口があればと思っています。

A. 短期的な活動で解決できる課題ではありません。

何かしらの企画をすると、その結果を数値(来場者数など)で評価されがちですが、数年続けてみて、その数が増えることだけが課題解決ではないのだとわかりました。

アーティスト本人や、アーティストの作品にここで触れた方が深く何かを受け取ってくれた瞬間をいくつもみているので、それはこの企画を頑張ってきたご褒美のようにも感じましたし、今後の活動の糧になっています。

数値で成果は見えないと思います。この空間でしかできないことをできた達成感は何度も味わわせていただきました。

A. 地域資源をより豊かにできる地域です。

アート活動に携わる者としての回答ですが、アートやアーティストの活動の価値を多くの人が理解し、地域資源をより豊かにするために、地元の人と、外からくるアーティストや鑑賞者が良い形で連携し合って地域の価値を上げていけるような地域が理想だと思います。

A. 表現者がそれぞれ持っている世界観を、越前海岸という舞台で展開してもらうことで、ここでしか生まれ得ない作品が生まれるように努めています。

実際には、アーティストによってそれぞれ進め方が異なりますが、地域特有の素材(ここならではの風景だったり、海岸で得られる漂着物や海産物など)や、地元で活動さてれいるユニークな事業者の方達とふれあって、自身の創作の奥行きが増えるような経験をここでしてもらえるように努めています。

滞在期間が限られている中で、有意義な滞在にしてもらうために来訪前に打ち合わせを重ねます。

今年は秋に地元の小中学校の授業に関わらせてもらい、子どもたちとアーティストとのコラボの機会を作り、発表に繋げます。ここでは子どもたちとアーティストが、何か地域の魅力やここで表現することの楽しさを共感してもらえるように小中学校の先生にもご協力いただきながら内容を丁寧に考えています。

補足

越前海岸へは、私は東京から5年前に移住してきて、外から見た視点で関わることがスタートでした。

そして5年間続けてみて、中の人間になりつつあり、外からの視点と中からの視点両方から、地域も社会も見えてくるようになり、地方であるこの地へアーティストを招聘し地元の素材や人と関わってもらうことの価値を強く感じることが増えました。

アートでしかできない地域づくり、人とのつながりがあることも強く感じています。なので、自分自身も創作をする人間ですが、そうした創造的な仕事をしていく上で、地域と関わってゆき、地域と共に自分が成長できることは大変良い道を選んだなと思っているところです。

ここではお伝えしきれないほど課題は山積みですが、やりがいのある活動に関わらせていただいていると思っています。

一人でも多くの若い方に関心をお持ちいただき、関わっていただける機会ができればと願っています。長くなりましたが読んでくださってありがとうございました。

細かなところなど気になることありましたら引き続きどうぞまたいつでもご質問いただければと思います。探究の学習に少しでもお役に立てれば嬉しいです。

ご丁寧なご返信をいただき、誠にありがとうございます。

やはり地域課題としてよく耳にするのは、過疎化の問題ですね。

どのお言葉も非常に価値があり、探究活動を進める上で大変参考になります。

一つだけ質問させていただいてもよろしいでしょうか。

もし差し支えなければ、ぜひ教えていただけますと幸いです。

A. 地域の外の視点から見た違いについてですが、一番感じるのは、人材が少ないが故に、一人一人のスキルや価値が際立つ点だと思います。

技術が少しでもある方はそれを伸ばしやすい土壌があると思うことが多々あります。

さまざまな産業がある福井は、他の県と比べてもとても恵まれていて、あらゆる分野の人のスキルが生きるチャンスは豊富だと思います。

東京にいると埋もれてしまう一人一人の存在意義も、いろんな分野のエキスパートと接点を持ったりしやすいので、広がりが生まれやすいと思います。

子育て中の身としては、人数の多い学校などのデメリットも少し見てきたので、少人数ならではの良さもあると思います。

ただ子供の人数が移住当初よりもさらに減り、小中学校全校児童生徒数が本当に少なすぎるので、当たり前の友達関係を地区内で築きにくい点で、不安に感じることもあります。

※本文は生徒の許可を得て、記事とさせていただきました。Fさん、お便りを頂きありがとうございます。

※本文の一部の表現は、読みやすいように校正してあります。

この記事を書いた人

版画ゆうびん舎 おさのなおこ

2019年末頃、東京都町田市からIターンで移住。
版画ゆうびん舎を運営し、版画作品、版画を使った日用品・デザイン等を制作し、地域に開かれた版画教室を主催。2019年~2022年は、越廼・国見地区の地域おこし協力隊に就任し、ガラス作家で隊長の長谷川らと共に、古民家「はりいしゃ」でレジデンシー事業を数多く手掛ける。