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アートプロジェクト対談 橋沼みわこ×おさのなおこ(後編)

橋沼さんご来福初日に、越前市は今立にある「和紙の里」へ、手漉き和紙工房巡りをしてきました。

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白い和紙

取材協力:栁瀨良三製紙所
取材協力:山喜製紙所 

伊: それでは和紙をご覧になられて実際感じたことありますか。

橋:そうですね、和紙を直に見ると柔らかいあたたかさを感じます。それだけで心が癒されます。和紙工房を見学出来るとの事でドキドキしながら足を踏み入れたのですが、敷居が高いと思っていた人間国宝の市兵衛さんや職人さん達が作業現場に心よく入れて下さり作業の様子を会話しながら見せて頂けたのは印象深い経験でした。ただただ直向きに作業する姿が印象的でした。

お:踏み入れる方は勇気を要しますよね。小さい工房を訪ねたいという欲求は強いのですが、お相手が、和紙の世界の、「人間国宝」であったりするばかりか、どの工房も塵一つはいらないような精巧な和紙を作っている神聖な場、というイメージが強いので軽々しく扉を叩けません。

お:ですが今回、橋沼さんがご一緒くださったことで、いつも以上にマニアックな質問ができました。岩野市兵衛さんのところに行った時に、楮のお話をさせていただいたのですが、楮は煮るんですよね。「煮る」という工程で一般的にソーダ(重曹)灰というケミカルな物を使うのですが、市兵衛さんのこだわりでは草木灰(ソウモクカイ)を使うそうなのです。

お:「そばとか蓬の灰なんですよ」と、たくさんお話をしてくださりました。

取材協力:岩野市兵衛製紙所 人間国宝 九代目岩野市兵衛さん

橋:「蓬なんて細いから、量が少ないんじゃないですか」との問いにも「時期があるんです」とお応えいただいたり。夏の時期の太く固くなった蓬を使うんですね。

お: そうは言っても大変ですよ、蓬だけを乾燥させて、灰にするということは。美しい和紙を作る秘訣がずっと気になっていたんです。市兵衛さんだったり越前の生漉きの楮紙って、不思議なきらめきがあって、まるでラメが入ったような、品のいい輝きがあるんです。なんでこんなにキラキラしているのか疑問が解けました。

市兵衛さんの楮100パーセントの和紙

お:橋沼さんもご自身で楮を和紙にするところまでやってらっしゃるんですよね。ここにある素朴な和紙はみんなご自身で漉かれたんですよね。

作品タイトル:とりの木

橋:凹凸があったり、上手く剥けず色もくすみ白い和紙じゃないんですね。私が使うコウゾは 1年ものと2年目のものがミックスしてるんです。市兵衛さんとお話していた時に、楮が2年ものだと、古いお米と一緒で、素材として扱いにくい、「つかう楮は一年ものに限る」って言われて、必ず1年に1回刈り取らないとダメなんですよって。あ〜白くならないのはそういうことだったのかって。

煮炊きしている楮
煮た後、楮の皮を剥いだもの

橋:くすんだ色の和紙は野生的で味わいのあるものとして使用しています。

お:タイの手漉き和紙とかはもっとすごいじゃないですか。もっと素朴で。あれはあれでいいですよね。とても好きです。

橋:そうですよね。タイなど多くのアジア産の手漉きの紙は真っ白でないですよね。気候の問題もあり皮が厚いのと真水で晒さないからでしょうか、、それはそれで土着的な感じで好きです。

橋:市兵衛さんの和紙は小さな塵でも取り除いて混じらないようにしているのと薬品を使って白くしていないので何百年たっても色が変わらず維持出来ると仰ってました。

橋:タイの紙など、素朴な和紙はそれはそれでいいのですが。

伊: 僕もネパールに旅した時に、乾かしている時にピタッと止まるのかな。ノートだったんですが、紙すきの中に虫が入っていたり、ひどい時には髪の毛が入っていたり(笑) 

お:私も普段そんなに工房をたくさん見学できていないので、今回橋沼さんといけたことでいっぱい発見がありました。

橋:そうですよね。普段行けないです。

お:あとはですね、このはりいしゃ周辺を是非見て頂きたいと思っていて、(はりいしゃに着いた時、18時くらいで真っ暗で、橋沼さん海をまだ見ていなかったんです。) 今回会期の真ん中の日、あつこさんにお願いして越前海岸のご案内にお連れしていただいたんですよ。束の間の天気も良かったし。

橋:自然の彫刻の様な鉾島や軍艦岩。越前海岸は大人の見どころだけでなく、子どももね、こんな所で遊んで欲しいと思う場所でした。

橋:今は静かですが夏はやはり観光客がいますか。

お:はい、夏の海水浴場は駐車場は有料となり、いつも満車でそれなりに混みます。

伊: キャンプ場も人や車が多いです。

伊:そうですね。でも実は、スポットとしては地元の人しか行かないような場所のほうが多いかもしれません。

お:ここの土地の形状として、三国方面から敦賀まで抜ける通り道として終わってしまうんですが、いざこの地にじっくり留まってみるとそれはそれは素敵な場所がたくさんあります。住んでみないとわからない部分があるんです。

橋:越前海岸辺りは空き店舗だったり、昔は魚屋さんだったのかなっていう場所だったり、使われていない店舗が沢山ありますね。地域の方々と協力して盛り上げていきたいですね。

伊:そうすると最初の話に戻るんですけれども、シュタイナーの方が来た時に温度差が生まれたっていう。移住者が突然来て、何かをしようと思っても、すんなりとはいかない。

お:藤野のまちづくりの足跡だったり、アートが盛んな部分だったりを、見学ということで一度行ってみたいです。橋沼さんがご提案下さいましたが、藤野と越前海岸が姉妹都市のような交流が生まれるといいですよね。

橋:こちらは宿泊施設があるのは大きいですよ。藤野も滞在型のギャラリーが出来ました。 打ち解けたきっかけとしてこんな話があります。地元の人が、100円の無農薬の野菜を売っていたんですよね。「無農薬の野菜」なんて当たり前のことだから。でもたまたまシュタイナーの保護者の方が来られて、、300円で売っていたんですよ。それを見て俺たちと同じ作り方じゃんって。シュタイナーの方がこれは「売り方」だよっていうことを伝えたんです。

伊・お:ヘェ〜それは理想ですね。いいお話しですね。

作品について

お:作品を見ていきましょうか。

橋: 「雪」をテーマにしたいというのはありました。漠然と自分が持ってるイメージの「雪」。自分の仕事場の目の前が、自然の景色しかないので、自然とは常に対話できる環境にあります。その中での「雪」のイメージを作りました。

伊:雪というと北陸の、中でも越前海岸の雪は独特なんで、 質の違う雪を味わっていただきたいです。みぞれ混じりの雪とか。

お:藤野も雪降りますよね、こちらよりたくさん降るんじゃないかな。ここは深々と降るというよりも、風が陸に当たって、横に流れこんで、上に向かって雪が舞上がったり丘を登っていたりするんですよ。

橋:ヘぇ〜!見てみたい。

お: 大粒のあられの後、みぞれが吹き荒れたかと思ったら、直後お日様が出て青空がキラキラと現れたり、といった縞々の天気だったり。とてもユニークです。大概そんなふうに降る浜の雪は、降った瞬間に消えちゃいます。まれにドカッっと降っても、基本長い期間雪が残ることは少ないです。

橋: 越前海岸の雪だとどんな風に見え感じるのかな。気になります。雪はいろんなものに例えられるじゃないですか。肉眼で見える形がシンプルなだけに。周辺の空気感や季節や自分の精神状態によって雪が鳥や葉っぱや花、そして音だけが見える時もあり、天から現れて目的地に着くまでの時をさすらい瞬間でしか見られない美しいもの、大好きです。

お: 天と花これはどういった作品ですか。

橋:天から降ってくる最初の雪、花が1つ落ちてくるみたいな、、初雪ってありがたみを感じますよね。 雪の結晶の形、モチーフを選んで作りました。

お:改めて、今回の展示会の見どころ、思い入れはどういったところですか。

橋:それぞれの雪の表情をみる方が自分の心に聞いて欲しいと思っています。どう感じているか。作り手と観る方のライヴなコミュニケーションが出来たら嬉しく思います。

作品タイトル:大切なものを探しに

橋:切り絵は基本的に平面ですよね。でも(私の場合)平面だけではイメージ出しきれず。鳥の巣の様にしたくて二重にしたり立体にしてみたりしました。大切なものは自分の近くにあるのに外の世界に出たくなる。そんな想いで旅立つ黒い鳥です。

お:本当に、おしゃれですよね。コスチュームデザインをされていらしたことが作品に生きているというのか。はりいしゃの空間が、この上なく素敵な空間となりましたね。

お:まだお聞きしたいことはありますが、お時間もきましたし、この辺で失礼します。

伊:はい、本当、今日はありがとうございました、お疲れ様でした。

橋:はい、ありがとうございました。お疲れ様でした。

この記事に出てきた人

システム担当 / Qwel Design 伊藤大悟

2019年末頃、東京都町田市からIターンで移住。
Qwel Design (クヴェルデザイン) として、web・システム制作、子どもプログラミング教室等事業を個人で運営。妻は版画ゆうびん舎を運営するおさのなおこ
隊内ではシステム担当で当サイトのwebマスターを担い、熱く実直に組織改善、地域課題にも向き合う。

版画ゆうびん舎 おさのなおこ

2019年末頃、東京都町田市からIターンで移住。
版画ゆうびん舎を運営し、版画作品、版画を使った日用品・デザイン等を制作し、地域に開かれた版画教室を主催。2019年~2022年は、越廼・国見地区の地域おこし協力隊に就任し、ガラス作家で隊長の長谷川らと共に、古民家「はりいしゃ」でアート関連事業を数多く手掛ける。

この記事を書いた人

デザイン担当 / mogurimasu 鈴木淳子

福井市出身。結婚を機に越前海岸エリア内鷹巣地区へ移住。
デザイン事務所 mogurimasu を運営し、ビジネスやライフスタイルに応じてデザインされたフライヤー、パンフレット、ロゴ、商品を提案。
隊内ではデザイン担当に留まらず、古民家「はりいしゃ」の改修やアート企画、会計庶務など、多岐に渡って活躍する努力の人。
2022年には、薪ストーブと焚火を楽しむ会 薪アイアイ を設立。